第175章 思惟
「あはは、もしかしてリヴァイに食べられちゃった?飢えてたからねぇ、ナナに。――――というかもうそれ狙いで奴はナナに帯同したと私は思ってるけど。まぁでも……。」
茶化したような口調で言われたそれにギクリとして、肩をすくめて身を縮めた。
「――――えっマジで?」
「――――……決してリヴァイさんが無理矢理とかでは、ないです……!私の、意志で受け入れたので……。あ、の………。」
呆れられると、罵られると思った。
エルヴィンのことも心から大事に家族のようにしていたハンジさんだから……エルヴィンを愛していると言いながら、その亡き後にすぐ心変わりするような私を許せるはずなどないって。
――――決して忘れたわけじゃない。
心変わりしたわけじゃない。
今でも鮮明にその蒼い瞳を瞼に描ける、耳元でその甘く低い声を再生できる。
――――けれど、明日この空に飛行船が現れて………私たちは滅びるかもしれないんだと、喉元にナイフを突きつけられている危機感を誰より感じているリヴァイさんが私に性急に答えを求めたことに、応じない選択肢はなかった。
だってずっと、ずっとずっと愛し続けて―――――……
同時に、傷付け続けてきた人だ。
「――――ごめんなさい……。エルヴィンを、愛してないわけじゃないです。忘れられるはずもないんです。なのに、私は――――……。」
ハンジさんはあっけにとられたような、驚いた顔をしていた。そうなるに決まってる。エルヴィンを失ってまだ日も浅いのにその変わり身はなんなんだと、思っているに違いない。
私の決意は、結果的にハンジさんの大切な2人を、軽んじているように見られたって仕方ない。
責められても、罵られても仕方ない。
でもリヴァイさんに応えたからには、リヴァイさんと生きることを赦してくださいとハンジさんに食い下がる覚悟だって、ある。
その意志をちゃんと示そうと、ハンジさんを真っすぐに見つめた。