第174章 燈
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――――暖かい。
とくとくと早く打つ鼓動が心地いい。
窓から差し込む朝日が眩しくて目をひらくと、黒く長い睫毛を降ろして眠るリヴァイさんが目の前にいる。
――――心はまだ、ぐちゃぐちゃのまま………でもどんよりと痛む恥骨や、ひりひりとする下腹部に、エルヴィン以外の人に体を許したんだと強く認識した。――――泣くのはおかしい。そして、泣いたらリヴァイさんが心配する。悲しむかもしれない。
うまく整理できない頭を抱えて、ぼんやりと目の前の美しい人の寝顔を見ていると、あることに気付いた。
そう言えば、体にひとつも……噛み跡も、唇の痕もの残ってない。あんなに嫉妬心を激しく見せて、激しい情事だった。これまでも体を重ねるとほぼ確実に、どこかに所有印を刻んでいくのが常だったのに。
昨晩だって、私の身体にリヴァイさんの唇が触れていない場所はないんじゃないかと思うほど、くまなく唇を這わせていたのに。――――傷つけずに労わろうとしてくれたのだろうか……?
「――――……にしては、時々乱暴でしたよ……?」
ふっと笑ってその髪を撫でようと腕を少し動かすと、瞬時に体を強く強く抱き止められる。
「っ……くるし………いです、リヴァイ、さ………。」
「……………。」
――――眠ってる。やっぱりこの癖はまだ抜けていないのか。リヴァイさんと同じベッドで眠ると、とんでもなく敏感に私の動きを察知しては、逃げられないようにその腕に閉じ込める。
――――もちろん彼は眠ったままの状態で。
一度こうなってしまえば、リヴァイさんが起きて腕を解くまで出られない。昔、お手洗いに行きたくても放してもらえず、泣きながらリヴァイさんを起こしたことがあったっけ。