• テキストサイズ

【進撃の巨人】片翼のきみと

第174章 燈







「――――君は……未成年かな?」





老紳士は笑顔でもない、でも柔らかい表情で僕に問いかけた。





「………いえ……一応大人、です。」



「そうですか。それならちょうどランプを灯したところで、今から開けるところです。一杯いかがですか?」





その言葉と、彼の整った身なりにギャルソンエプロンから、そこがバーなのだとやっと気付いた。





「あ……僕、お酒はあんまり詳しくなくて……。」



「詳しくなくていいんですよ。むしろ今から色んな酒に触れて、自分の好みを知るといい。自分の好みを知るのは……“自分”を知ることに繋がる。」



「――――………。」





その言葉に、ドキ、とした。



僕はなに。

僕は誰。

僕はなぜこんなに自分を好きになれない?

自分を信じきれない?

――――誰も、信じきれない……?



最愛だと思っていた姉さんすらも………。

慕ったはずの、義兄さんすらも………。



自分を知れば、変われるのか。

そんな僅かな光にすがるような思いで、一歩、踏み出した。





マスターなのであろうその老紳士の後について、まるで王都の喧騒から逃れるように数段の階段を降りた先に、黒塗りの重厚な扉がある。





ぎぃ、と古めかしい音を立てて、その異次元のような空間への扉が、開いた。








「――――いらっしゃい、どうぞごゆっくり。」







/ 3820ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp