第173章 情炎② ※
―――――――――――――――――――
――――体を揺さぶられながら、時折ナナがふと悲しい目をする。
それは……エルヴィンへの罪悪感か、過ぎた日のエルヴィンとの想い出を探しているのか………俺とのセックスを、エルヴィンとのそれと重ねているのか。
――――なんであっても構わない。
今俺の腕の中に、俺の名を呼びながら身体も心も許したナナがいる。それが全てだ。
エルヴィンと重ねた時間を全て無かったことになど到底できるわけもない。――――それにあいつのことだ。一筋縄でいくはずがない。ナナの心のどこかを一生繋ぎ止めるためのなにかを、絶対に遺しているに決まってる。
それで構わない。
――――もともとエルヴィンが生きていれば、こうしてナナを抱くことは二度と無かった。エルヴィンの死に乗じてつけ込んだのは俺だ。
それに俺は心のどこかで思っている。
悔しさも否めないが………俺だけに染まりきっていたナナよりも、俺とエルヴィン両方の色が混ざった今のナナは………相当そそる、いい女になったと。
「――――んうっ、ひぁッ…ぁあ……い、や……!」
「――――お前の『いや』は、煽ってるようにしか聞こえねぇ。」
ナナに向ける情欲の炎は消えることがない。
むしろナナの中に突き入れば突き入るほど、その勢いを増して燃え上がる。
ベッドに寝そべったままナナを後ろから激しく抱く。半分こちら側に上半身を向けさせ、顎を捕らえて唇を塞ぎながら口内も貪る。敏感に震える胸の頂も強くひねりあげると、ナナが肩をびくんと揺らして反応するのが、たまらねぇ。無尽蔵に溢れ出るのかと思うほどの愛液をまた滴らせて俺を咥えて放さない。
時折「いや」と喘ぐが、もうすでに焦点がずれ始めたナナの紺色の瞳は、涙とともに確かに色欲の色が滲んでいる。
――――溺れたい、このまま。
世界の行末などすべて放り出して、永遠にこの狭い部屋に、ナナを閉じ込めてしまいたい。