第172章 情炎 ※
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「――――はっ…、1人で勝手にイくなよ。俺を置いて行くなんて赦さねぇ。戻って来い、ナナ。―――――ナナ……。まだ足りない……もっと映せよ、その目に――――俺を。」
ナナの中からずるっと自身を引き抜くと、愛液か潮かもわからない体液がぽたぽたといくつもシーツに染みを作る。
うつ伏せたまま肩を激しく揺らすナナの身体を返してその顔を見ると、言いえぬ征服感と優越感と愛しさが込み上げる。
半開きの唇の端からはだらしなく涎が落ちて、目からは涙が零れ落ち、頬を染めて―――――認識しているのかしていないのか、ぼんやりと俺を見つめる。
嫌悪で泣いているわけではない表情に、少しホッとする。
「――――………い、て………。」
「あ?なんだ、ナナ。」
ナナがうわごとのように俺に手を伸ばして呟く。
その震える指をとって指にキスを落としてから、ナナに覆いかぶさってもう一度問う。
「なんだ、どうした。」
「――――もっと……抱、いて……。」
「………言われなくてもそうするつもりだが。辛くないか?」
俺の問にナナは今さら?とでも言いたそうに少し生意気な目を細めて小さく笑む。
「……辛くなんてないです。むしろ………。」
「なんだ。」