第15章 相愛
「表立った名前には今までと同じ、君の父上の名前があるが………その傍らにはほぼ全ての決定権を同じく持っている人物として、『ロイ・オーウェンズ』という名前があがっているが、これは………。」
「!!お、弟です………!」
「なるほど。やはりそうか。最近のオーウェンズ家の力は目を見張るものがあり……王政にも影響を与えかねないほどだと聞く。君の弟君の名前が出始めた頃からだ。………その才覚は、血筋かな。」
私は言い知れぬ不安を感じた。
いくら名を捨てても、この身体を流れる血が変わるわけではない。血を分けた弟が今、何を考え何をしようとしているのか――――――――私は知らなければならない。
あのまま、和解できないまま家を飛び出してきたけれど……もちろんそれで終わるはずがなかったのだ。私はまた、オーウェンズという大きな力と対峙する時が来たのかもしれないと予感した。
それからエルヴィン団長は事のあらましを話してくれた。
作戦の概要と、私に求める役割を。
「医療班の検討を進めるためにも、オーウェンズがどれくらいの医療従事者・病床・必要物品の提供をするつもりがあるのかを把握し、状況によっては交渉も必要、ということですか。」
「理解が早くて助かるよ。その通りだ。中央とオーウェンズ家で話が決まってしまう前に先手を打ちたい。」
「………承知しました。早速、アポイントをとります。」
エルヴィン団長は机の引き出しから、封書を一通取り出した。
「すでに来ているんだ。オーウェンズ家から会食の誘いが。ご丁寧に、君を指名している。」
受け取った封書の裏には、ロイ・オーウェンズのサインがあった。
最後に弟から手紙をもらったのはいつだったか………まさかこんな形の手紙を受け取る日が来るとは……私は目を細めた。