第15章 相愛
夕食を終えて、私は約束通りエルヴィン団長のもとを訪れた。
「エルヴィン団長。ナナです。」
「あぁ、入ってくれ。」
「失礼します。」
エルヴィン団長はこちらに目をやることもなく、頬杖をついたまま書類に視線を落としている。どこか思い悩んでいる様子だ。
「根を詰められていらっしゃるように見えます。コーヒーをお持ちしても?」
「あぁ、頼むよ。」
ようやく少し顔をあげ、私に微笑みを向けてくれた。
私はコーヒーを淹れ、エルヴィン団長の机に置いた。
その机に広げられていたのは、今までにない規模の人数を相手にいかに訓練を行うか、巨人の生態についての座学から、隊の編成、装備の手配書など膨大な資料の山だった。
私は目を見張った。それに気付いたエルヴィン団長が、低い声で話し始める。
「………バカな事を考えるだろう?」
「………エルヴィン団長……これは………。」
「………あぁ、来年………一般市民を壁外に出し、ウォール・マリアを奪還するという作戦が実行される。」
「――――――――――!?」
私は言葉を失った。
「………死に……ます…………、人が、たくさん…………。」
「…………そうだな。」
エルヴィン団長は静かな目をしていた。
「市民の訓練の一端を調査兵団が担うことになっている。………まぁこのあたりは、リヴァイに噛んでもらおうと思っているんだが……君に相談したいのは、医療体制についてだ。」
「はい………。」
「この作戦ではもちろん大量の負傷者が出る。その負傷者を受け入れる医療体制を仕切るのが、君の生家であるオーウェンズ家だそうだ。」
「――――――――――――!!」