第172章 情炎 ※
「――――リヴァ、イさ……――――んッ、ぁ……っ……。」
ナナの両手が再び俺の顔を捕まえた。
――――そうだ俺は、捕まえてほしかった。
お前のこの白く小さな手に。
深い紺色の瞳に。
お前の――――中に。
ナナは俺を引き寄せ、目を閉じてキスをした。
柔く温かい唇をそっと放して、額を合わせたまま、目に涙を溜めて俺に乞う。
「―――――あなたが求めてくれるなら………。」
「――――………。」
「――――もう一度、あなたのものにしてください………。これからの私を、ぜんぶ。」
―――――――驚いた。
あくまで流されず、自分の意志でそれを選ぶけじめは守るつもりか。
エルヴィンが育てたんだな、泣いてばかりだったあどけなさと脆さの残るナナを―――――………自分の生涯の伴侶にするべく。
それを叶えられなかったのは、さぞ無念だろうが。
安心して見てろよエルヴィン。
ここから先のナナは、俺がもらい受ける。
――――何があろうと、死ぬまで。
いや、お前と同じく………死んでからもずっと。
あの世でまたとり合おうじゃねぇか。
それも悪くないだろう?
ナナの目は涙に濡れているものの、真剣だ。
俺と生きる―――――決意をしたのか。
「――――後悔するなよ、重いぞ俺は。」
「知ってます。」
「あとめちゃくちゃ抱く。」
「……それも知ってます。」
「―――――お前を誰より愛してる。13年前からずっと。これからもずっと。」
「―――――………っ………。」
「――――――側で笑ってろ。それだけで俺はなんだってできる。この世界まるごとですら、守ってやる。お前のためなら。」
「――――私には………もったいない、です………。」
「卑下するな。俺がお前がいいと言ってる。」