第171章 感応
「――――……あなたに相応しくない、弱くて狡くて……汚い女です。」
「………あと鈍感で、我儘で、頑固で、淫乱だ。」
リヴァイさんもまた私の頬に手を当てて、指で前髪を少し遊ばせながら悪態をつく。
「………うるさいですよ、喧嘩ですか。この状況で。」
「事実だろ。」
「………こういう時は、甘い言葉を吐くもの……ですけど……。」
「――――そんなお前だから欲しい。ナナ。」
ふいに私の髪を一房救って、そっと目を閉じ、大事そうに、宝物を扱うみたいにそこに口付ける。
そしてその瞳をまっすぐに私に向けて、心からの言葉をくれる。
「お前しか欲しくない。」
「………ふ………。」
「――――何が可笑しい。」
「だって……あまりにも強くて素敵な、口説き文句だから……。」
「鈍感なお前には、回りくどく言ったところで伝わらねぇからな。」
「――――かっこよすぎます、私のヒーローは……。」
「――――そうだ、俺はあの地下街で――――お前を守り続けると誓った。お前が、俺を必要だと言った時から。」
「………はい。」
――――ただ一つ気がかりなのは……私が死ぬかもしれないことだ。
私がいなくなったあとのあなたを想うと、一緒にいないほうがいいのじゃないかという考えも、まだ拭えない。
「――――リヴァイさん、私……が、もし………。」
言いかけた私の心配を払拭するように、リヴァイさんは言葉を重ねた。
「お前が死ぬとしても心配ない。ちゃんと見届けてやる。死ぬまで。お前が死のうと……俺が生きてる限り一生愛してやる。」
リヴァイさんの右手がまた、私の頬にそっと触れる。
「だから何の問題もない。――――安心して俺の側で、笑ってろ。」
――――驚いた。
そして私の目からは涙が溢れ出る。
だって………これ以上心強い言葉はない。