第171章 感応
「―――――……ナナ……。」
しばらくの沈黙が続いて、リヴァイさんが私を呼ぶ。
目を開けて――――、自分のことばかりじゃなく、いつまでも先延ばしにするのではなく、あなたとちゃんと向き合おう。
目を開いた先にはやっぱり、複雑な想いを胸に秘めて、いつもよりもとても苦しそうな、不機嫌、だけれどもいつもより随分弱気な顔のあなたがいる。
「――――嫌です。」
私の拒否の言葉に、リヴァイさんは目線を下げた。
「…………。」
「――――リヴァイさんは誰の代わりにもならないで………。」
「――――……ナナ……?」
リヴァイさんはただ驚いて、下げていた目線をゆっくりと私に戻した。
「………この世で唯一の、私のヒーローなんだから。」
手を伸ばして、彼の黒髪をさらりと撫でる。
毒気を抜かれた顔はまるで少年みたいで………。何かの希望を見出したような表情で、私を見下ろしている。
「――――………。」
私が感情を露わにできるように、憎まれ口をたたいたり。
私がその腕に戻れるように、強引に迫ってみせたり。
いつだってあなたの行動は自分の気持ちよりも私を優先していて――――こんなにも不器用で深い愛情をくれるあなたに、『愛しているなら応えろ』と言われたからじゃなく、流されるんじゃなく、先延ばしにするんじゃなく、今……私は私の意志で応えよう。
ちゃんと。
「――――私はエルヴィンを………愛してます。」
「………嫌ほど知ってる。」
「それなのに意地汚く、あなたのことも愛してる。」
「―――それも知ってる。」
「………けれど、どういう種類の愛かが、分からない………。」
「………そうか。なら見つければいい、また……最初から、一緒に。」
ずっと避けてきた。
あなたへの愛情に名前をつけてしまうことを。
そして――――……絡み合って、もつれて、結局わからなくなってしまった。
だから……あなたがそう言ってくれるなら、もう一度解いて、一緒に見つけたい。