第171章 感応
「―――いい度胸だ。」
ナナの身体からシャツをはぎとる。
首に残る、俺が噛み潰した傷跡を守るための包帯も当て布も邪魔だ。乱暴に包帯を解いてそれを取り去ると、その傷跡は赤黒く鬱血して、その周りは紫と青のまだら状態だ。
そこに犬歯が食い込んだ穴がくっきりと、開いている。
ざわ、と総毛立った。
――――こんなにも傷を負わせたのか。
あんなに………傷付けたくない、守りたいとぬかしていたくせに。感情に駆られたからと言い訳を並べて――――……
そうだ、あの時ナナが俺を抱き止めなければ、俺はナナを………殺していたかもしれない。
そしてまた、同じ事をするのか?
俺は………。
エルヴィンは最後の特攻をかける直前―――――俺に言った。
『リヴァイ。――――ナナを、頼む。』
あの独占欲の塊のような男が、嫉妬深く腹黒い、ナナを骨の髄まで愛していたあの野郎が。
―――――俺にナナを頼むと。
この世で最も信頼している男2人から託されたんだ。
応えないわけにいかない。
俺はナナを守り育て導くとワーナーに、
獣の巨人を殺すこと、そしてナナと共に生きることをエルヴィンに、
誓った。
――――はずだった。