第171章 感応
「認めろ。お前は俺が欲しいはずだ。」
「………そんなこと、ない……っ……!」
耳元で囁かれるそれは、まるで私の心の奥底にずっと隠し続けた、意地汚い欲望を引きずり出すようだ。
否定してみるけれど、私の汚さを肯定して、認めろと――――……折れてしまえ、楽になるぞと言うように、甘く切ない声で畳みかける。
「――――俺はお前が欲しい。」
―――――私の心を、……奪わないで………。
「――――………。」
「――――エルヴィンに抱かれながら、エルヴィンを愛していると言いながら―――――心の奥底で本当は……ずっと俺が欲しかっただろう?……そうやって強欲に我儘に、俺を繋ぎ続けただろうが。」
「……そ、れは………っ……。」
――――お見通しだ、何もかも。
でも……でもエルヴィンを愛してる。
そこに嘘はない。
これからも愛し続ける。
そう決めた。
ただリヴァイさんに向かうこの気持ちが、どういう愛情なのか名前を付けられずにいるだけ。
それは家族愛と敬愛に近いもので………そう、そうでなきゃいけない。
異性として受け入れて……いいはずがない。
誰も喜ばない。
みんな傷付ける。
「――――知ってんだよ。お前は俺なしで生きられない。そうなるように――――時間をかけて、俺がそう躾てきた。」
「………っ……!」
「なぁナナ。エルヴィンは死んだ。もういない。今度こそ俺の腕に還れ。」
リヴァイさんの手が後ろから、私の顎先をぐっと掴んで……、その指が、唇を割り入って差しこまれる。
……何が異性としての顔を向けない、だ。
窓に映る官能的に頬を染めた、 “女” でしかない自分の表情を見て――――……絶望する。
それでもなお抗おうとするのは、エルヴィンへの想いがそうさせるんだ。
「――――でも…っ、待って……私は―――――……。」
「――――待たない。俺を繋ぎ続けた責任をとれ。心も体も寄越せ。今度こそ俺に―――――お前の全てを。」