第171章 感応
「放してください、リヴァイ、さん………。」
「――――放さない。」
「……っ私は、これからもエルヴィンの――――……。」
「あいつは死んだ。」
「――――………。」
リヴァイさんの冷たく言い放った言葉に、思考が停止する。
――――分かってる。
エルヴィンがもういないって。戻って来ないって。
「ナナ。あいつはもう二度とお前を見つめてその名を呼ばない。この髪を撫でる事も―――――お前の涙を拭うこともない。こうやって触れることも、抱くことも。」
その言葉につられるように、エルヴィンの声が、重ねて来た想いが、混ざり合う体温と匂い、吐息までも……次々に鮮明に思い起こされる。
そしてそれに強制的に幕を下ろすように、リヴァイさんはまた言葉を連ねる。
「――――受け入れろ。それが死だ。」
「――――……っ……いやだ………。」
消えちゃう気がするの。
受け入れたら、私の中からエルヴィンが。
私の心の一部が。
「――――あいつが死んだ今、この世でお前に触れていい男は俺だけだ。」
その言葉に恐る恐る顔を上げると、目の前の窓ガラスは外の夕陽の力を借りて鏡のように仕立てられていて、強すぎる引力を放つ彼に抱きすくめられて……自分の心を操れずに、これ以上なく不安定な顔をしている自分が映っていた。
窓ガラスの反射越しに、リヴァイさんの鋭くて色情の色を纏った視線と交差する。
その瞬間また、私の心臓が針を刺されたように収縮して跳ねた。
それはきっと……抗えないと、体が自覚した瞬間だった。