第170章 不遣雨
その後、お母様の病院へ戻って傘を返してから、ちらっとロイの研究所を尋ねてみたけれど案の定誰もいない、鍵で固く閉ざされたままだった。
――――次に来た時には、話せるかな、ちゃんと………。
少しの不安は否めないけれど、ロイを信じて、待つことにする。
そして昨日調べてもらうよう依頼した結果を聞きに、帰路の前にボルツマンさんにもう一度会いに行くと、すぐに院長室に通された。
忙しい中なのにこんなに早く調べてくれるなんて、ありがたいな……と大人しく院長室で待っていると、ボルツマンさんが資料を手にやってきた。
「――――ナナ、調べた結果だが――――………」
「あっ、あの……。共通していたものがあるのならその成分のみを端的に教えてください。」
「…………。」
私が言葉を被せて牽制するようなことを言ったから、ボルツマンさんは少し怪訝な表情をしつつ、僅かにリヴァイさんのほうをちらっとみて、察したようにため息をついた。
「――――ああ、あった。まだ病気の治療に効果的だとは言い切れないただの“可能性”どまりの話だがな。」
「あったんですか……!」
「ビタミンA。動物性の食物に割と多く含まれるが、中でもお前が言っていた……流通せずに捨てられる、狩猟民族や畜産農家の人間のみが食すような部位……特に肝臓に多く含まれるようだな。」
「――――………!」
あの時、サシャに聞いてみて良かった……!
まだ、まだわからないけど………、わずかでも希望は見えてきた。これからもみんなと一緒にいれらる希望が………。