第170章 不遣雨
リヴァイさんが飲む琥珀色のウイスキーの味を思い出す。
そう言えばつい最近まで、ウイスキーとブランデーの違いも知らなかった。
リヴァイさんと、エルヴィンに並びたくて……飲むようになって、徐々に、味の違いも、2人が好むお酒も、わかるようになった。
――――エルヴィンは、華やかな香りのキレの良い味が好き。ワインは赤白問わず、果実香と酸味が強くて、辛口なもの。ウイスキーよりもブランデーが好きだった。
リヴァイさんは、いぶしたような、クセのある香りが強いお酒が好き。紅茶に入れる時と、私が果実香を好むから私にはブランデーを出してくれるけれど、彼自身がよく好んで飲んでいるのは……木の熟成香の中でも、焦げたような煙たい香りがするウイスキーだ。
そんなことまでよく覚えている私は、自分の中のリヴァイさんの存在の大きさを認めざるを得ない。
わかってるの………大好きなんだって、自覚してる。
ぐるぐると頭の中で色んな事を考えながら、瓶を手にとっては蓋を開けて鼻を近づける。
「―――ちょっと違う……かな、もっと……爽やかで青々しい感じの茶葉でも合いそうな気が……。」
ぶつぶつと言いながら、また別の瓶を手に取る。
さっさと選んで、と思ったのに……リヴァイさんが好きそうなものを探すことに、知らぬ間に夢中になっていた。
「――――あ。」
いくつめだろう、ずいぶんな数の瓶を開けては嗅いで、それに辿り着いた時にピンと来た。
「――――いいかも……!」
まるで宝物を見つけたようなそんな高揚感で目を輝かしていると、背中に体温を感じた。
「!!」
私の背後から伸びて来た腕が、私の左手首を優しく、でもしっかりと掴んだ。
そして彼のほうに引き寄せられて、私の左頬のすぐそばに、彼の横顔がある。
リヴァイさんは、私の手ごとその瓶を自分の鼻先に近付けると、すん、と鼻を鳴らした。
「――――ああ、悪くない。」