第169章 涙雨
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――――リヴァイさんは終わらせようとしてる。
20歳の誕生日のあの日から……作ってきた歪な関係性を。
今度その腕に捉えられたら
その目に捉えられたら……
唇を重ねてしまったら……
また私は……意志も固まらないままふらふらと、彷徨ってしまいそうで……、だからどうやっても2人きりで夜を過ごすことにならない、この家を滞在場所に選んだのに。
リヴァイさんが広間を去ってすぐ、私も震える足で自室に戻った。
バタン、と扉を閉じてその扉に背を預けて、呪文のように繰り返す。
「――――大丈夫、私は大丈夫……できる、ちゃんと……!」
思わずバッグの中からお守りのようにエルヴィンからの手紙を取り出して胸に抱いて……またエルヴィンに向かって、懺悔とも言い訳とも取れないことを呟く。
「違う、揺らがない。あなたのものだって……証明する、ちゃんと……!永遠に愛してる、私だってそう……だから心配しないで、悲しまないで……っ……、私は――――……。」
あんなに怖かった雷鳴すら、その時の私には聞こえてもいなかった。
ただ必死に、自分に言い聞かせていた。
――――リヴァイさんは去り際に、切なく細められた……微々たる悲しさを含んだ目を……していた。
――――手を伸ばしかけて………なんとか耐えた。
リヴァイさんと初めて一緒に茶葉を選べると楽しみにしていた明日が、どこか憂鬱で………。
――――この雨が………降りやまずになにもかも……洗い流してくれればいいのに。
そんな馬鹿なことを、思った。