第168章 緒
「おかえりなさいませ、お嬢様。」
「ただいま、ハル。」
「これはリヴァイ兵士長、長旅お疲れさまでございました、どうぞごゆっくりお過ごしください。」
「ああ……有り難く世話になる。」
ハルが用意してくれた夕食をとって、リヴァイさんがお風呂に入っている間、久しぶりにハルが私の髪をブラシで梳いてくれた。
そして……気にしてくれていたのであろう、エルヴィンのことを聞いてきた。
「――――お嬢様……?」
「ん?」
「――――エルヴィン団長は……本当に、亡くなった、のですか……?」
「――――……本当だよ……、私もまだ、心のどこかで信じたくないって、思ってる……。」
「そんな………。これから先もお2人で、一緒に生きて行かれるんだって……。」
「――――それはもう、叶わないの。」
涙は枯れない。
私の頬を、一筋の涙が伝った。
「―――私自身とても、お慕いしていましたのに……。」
「うん……。私も、今でも……変わらず、愛してるよ………。」
きゅ、と胸に光る翼のネックレスに力を込める。
「――――運命は、残酷ですね………。」
「そう……、運命も、この世界も……とても残酷………。でもね、だから美しいものが、輝かしいものが、大事なものが、あるんだって、そう……思うことに、したの……。」
自分に言い聞かせるようにそう呟く。
その時に扉が開いて、リヴァイさんが戻ってきた。
「―――ナナ、空いたぞ。」
「っ、はい……。」
慌てて涙を拭った私とハルのことを、おそらくリヴァイさんは、見ていて……彼のことだ、何の話をしていたのかも、察してしまっただろう。