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【進撃の巨人】片翼のきみと

第168章 緒




「これに含まれるなにかの成分と、動物の内臓に共通する成分がないか、調べて欲しくて。」

「――――なに?」



ボルツマンさんはその紙袋を受け取った。



「可能性は高くはないんですけど、狩猟民族だった罹患者の例がどうしても気になって。狩猟民族だから食べるものの一つに狩った動物の内臓が含まれるという話はしたと思うのですが、その薬を継続して服用していた時が一番、体の調子が良かったので……。」

「これは、私が処方したものじゃないな?」

「………はい。」



ボルツマンさんは何かを少し考えた末に、その紙袋を机に置いた。



「分かった。」

「お願いします。」



心臓が少し、うるさい。

何か病気克服に向けた光が見つかればいいけれど………、そして………。




その診察は他にも多々お叱りを受けて、いうなればまぁ……無茶をしすぎだとこっぴどく𠮟られて、肩を落として実家までの馬車では終始私は、俯いていた。

そのどんよりとした空気を拭うように、リヴァイさんがぽつりと言葉を零した。



「――――あいつは、ボルツマンは血縁者か?」

「いえ?父が一緒に病院を育てて来た、いわば……父の戦友です。」

「――――そうか。」

「………なにか?」

「――――随分お前を大事にしていると、思った。どうでもいい存在なら、あんなに真摯に叱ったりしない。お前を本当に心配しているから、だろう。」

「…………!」

「――――リンファやサッシュのことと言い、お前は本当に……血の繋がりだとかそういったものを越えて人と繋がることがうまくなったな。」



リヴァイさんが窓から夜空を見上げながら何気なく零したその言葉に、目を丸くする。



「――――だが『心配させないように』と真実を曲げるのは本末転倒だ……って、ナナ、聞いてんのか?」

「聞いて、ます………。」

「あ?なんだよ。」

「ごめんなさい………嬉しくて………。あと、それに………。」

「――――あ?」

「私がそう、成長しているのなら……それはリヴァイさんやエルヴィン……ハンジさん、調査兵団みんなの……おかげです………。」

「――――そうだな。」



それから家までの道中は、特に会話もなく……ただ馬の蹄の音と、石畳を車輪が転がる音だけが響いていて……、でもその時間が、とても心地良かった。



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