第168章 緒
明日は、まず王都に戻ったらボルツマンさんのところへ行く。病気の進行を診てもらって……それから……。
私は自室の机の引き出しから、小さな紙袋に入った錠剤を取り出した。
「――――………。」
まだ数粒残っているそれを、久しぶりに喉の奥に流し込む。
「ロイに、会わなくちゃ………。」
残りの錠剤ごと紙袋をぎゅっと握り締めて、鞄にしまう。
――――次の日の早朝、兵舎の門前に私服のリヴァイさんの姿がある。
2人で出かけるのは……随分と、久しぶりだ。
「おはようございます。」
「………ああ。」
「わざわざすみません。」
「俺が言い出した事だ。気にする必要はない。それより……ここ最近で一番顔色がいいな。」
「はい!とても、気分もいいです。」
「………そうか。」
リヴァイさんが私の頭をくしゃ、と撫でる。その続きに、私の耳に光る黒い石に僅かにその手を触れさせていった。
どこか複雑な思いを秘めているのであろうその黒い瞳を覗き込んでみるけれど、リヴァイさんはふっと目を逸らした。
「行くぞ。」
「はい。」