第168章 緒
「――――いや、私が悪い。――――四六時中一緒に、いたからさ………。」
「――――!」
その一言でわかる。モブリットさんに指示するように、していたんだ……。
「もう少しちゃんと具体的に、話さなきゃね?」
「――――………いいえ。ぜひこのままで。」
「へ?ナナ?」
「モブリットさんが副官になられる前は、ハンジさんの最も近くにいたのは私だと自負があります。モブリットさんにできたことは、私にもできます……、いえ、やってみせます……!」
めらめらとよくわからない対抗意識が沸いて来て、ハンジさんに力強い眼差しで訴えてみる。
ハンジさんは目を丸くしてから――――……いつものように、大きく口を開けて、大笑いした。
「あはははっ!!!頼もしい!!!そんで、何に対抗してんのさ?!」
「――――モブリットさんが、見てると思って。」
「――――………。」
「『ハンジ団長の側にはナナさんがいるから、大丈夫だな』って、思ってもらえるように……頑張ります。」
ハンジさんは一瞬目元を手で覆って、嬉しそうに、少し……泣きそうに、俯いた。
「――――……あぁもう、ナナ……。」
「はい、鼻血用のティッシュならここに。」
「…………。」
「…………。」
2人で目を見合わせて、大きな声で、笑う。
―――――久しぶりだ。
こんなに笑えたのは。
大丈夫。
きっとまた越えていける。
―――――これもまたエルヴィンの言う“変化”だ。
変化するから、強くなれる。
変化するから、繋いで行ける。
それが………その想いの連鎖が、“永遠”なのかもしれないと頭に浮かべながら、
とても晴れやかな気持ちで、私はまた山になった書類の整理を始めた。