第168章 緒
「えっと、それはあれしといて?」
「は、はいっ……。」
「そんでさ、ナナ。こないだ言ってたあの件の進捗は兵団にもう一度推す必要があるから、お願いしてもいいかな?」
「……はい……!」
「そんで午後はあの資料まとめるから、関連のデータを……。」
「えっ……と、ごめんなさい……、ハンジ団長……。」
「えっ?」
ものすごいスピードでくるくると動いては、あらゆる指示を出してくれる……のは嬉しいのだけど、どうしよう……“あれ”とか“あの”が多すぎて、全然わからない……。
最初の2つくらいは何とか、頭の中をフル回転させて過去のことや、最近ハンジ団長が話されていたことを思い返して……おそらくあれだろう、というものには辿り着いたんだけれど。
そこに時間がかかってしまって、次の指示を聞き逃してしまった。
私は申し訳なさすぎて、しゅん、と肩を落としつつ……とは言え理解していないものを適当にはできないから、正直にわからないと言うことにした。
「―――あの資料、というのが何か……聞いてもよろしいですか……?」
「―――あ。」
ハンジ団長に声をかけると、ハンジさんは頬をぽりぽりと掻きながら、『やってしまった』という顔で申し訳なさそうに笑った。
「ごめんごめん!指示が乱暴すぎたね!!」
「いえっ……慣れれば大丈夫です、最初だけ少し……聞き返したりしてしまうかもしれませんが……ごめんなさい。」
小さく頭を下げると、ハンジさんはふ、とため息交じりに少し笑って、私の頭をぽんぽんと撫でた。