第168章 緒
「――――こいつが生意気なのはいいことだ。大人しい方が心配になる。」
「あぁ、それは確かに。」
「なんなんですか……私だってお利口にしてるときもあります……。あっ、そうだ、サッシュさんその足じゃ食事……持って来られないでしょう?待っててください。」
「おう!頼むわ。フルーツ山盛りで。」
「ふふ、はい。」
サッシュさんもリヴァイ兵士長もここに来てくれたのは……私を心配して、なんだろう。それに知ってる。サッシュさんがフルーツ山盛りで、と言うのは、私に食べさせるためでもあるって。
前に訓練中の怪我の軽さでも驚いたことがあるけど、サッシュさんはミカサやリヴァイさんとは違うけど、天性の身体能力の高さがあると思う。
筋肉がとても柔らかく、あらゆる衝撃を分散させる。
それだけでなくおそらく身のこなしも……感覚的に、ダメージを受けにくいように受け身をとってるんだろう。
――――すごいなぁ、うちの分隊長は。
ねぇミケさん。
あなたの後に、あなたと同じく仲間の信頼も力もある人が続いて、いますよ。
見てますか?
――――そんなことを思いながら、トレイに山盛りの食事をサッシュさんに手渡した。
「――――っ多いな!!」
「え。」
「……新手の嫌がらせかナナ、やるじゃねぇか。」
「え。」
「お前も食えよ!!責任もって!!ほら!!」
「は、はいっ……。」
それからなんとか吐いてしまう前にリタイアさせてもらって、ハンジ団長の部屋に向かう。
今日は……午後からハンジさんに相談して、もし隙間時間があったら……サシャのところにお見舞いに行こうかな。サシャの好きそうな食べ物を持って。
ミケさんのことを思い返したり、サッシュさんと笑い合えるようになったり……喪失感を紛らわすためじゃなく、前向きにすべきことを考えられるようになった私は、以前に比べると随分……心も体も良い状態だ。