第167章 Love Letter
時間をかけてその本を、読み進める。
不思議と、気分がいい。
まるで違う世界に……あらゆる賢人の思考が織りなす無限の空間に迷い込んでいく、そんな心地。
あぁそうだ……なんとなく、王都のマスターのバーの……あの空間に似てる。
エルヴィンはいつもあのバーに一人で行っていたと聞いた。
思考を深めて、自分と向き合うための空間にあの場所を選んだことも、今なんとなく、理解できた。
「――――行ってみようかな、マスターの、ところに………。」
ちょうど王都に帰るその時に、体調が良ければマスターのところにも行ってみよう。
きっと……エルヴィンの死を新聞で見て、悲しんでいるはずだから。
――――リヴァイさんにはお酒なんてダメだって、言われちゃうかもしれないけど……。
時間も忘れて読み進めて、本の半分程度まで来た時にハッとした。いけない、早く寝ろって言われていたのに……。
そう思って慌てて本を閉じると、はらりと一通の封筒が落ちた。
「――――………なんだろう?」
背表紙の近辺に挟んであったのか、床に落ちたその封筒は上質で真っ白な紙でできていて……、大切なものなんだろうと、手にとった感触でわかる。
見ても、いいのかな……大事な情報だったり……マリアさんへ遺したものだったりしたら、届けなきゃいけない……。
そう思いながら、封のされていない真っ白な封筒から、そっと中身を取り出した。
――――それを開いてまた、私は驚いた。
「――――これ………。」
間違いなくエルヴィンの字。
―――――でも、それはこの世界の言語じゃなくて、私が教えた――――……外の世界の言語で達筆に、綴られていた。
「――――宛名はない………。手紙、という書き出しの文面でも、ない……。」
――――練習?
勉強の為に書いたのだろうか。
私はそれを読み進める。