第167章 Love Letter
「―――明後日だがナナ、馬車を手配してる。」
「………え?」
しばらくナナの食事を見守りながら、明後日の王都への帰り方を告げる。
ナナは驚いた顔で、スプーンを口に運ぶ手を止めた。
「そんな……馬で、十分……ですよ?」
「――――道中で倒れそうで気が気じゃねぇ。笑えねぇぞ、病気でも、巨人に食われるでもなく……落馬で死ぬとかな。」
「――――ふふ……。」
「――――お前は実家に泊まるのかと思って、宿はとってねぇがどうする?」
「はい、もちろんリヴァイ兵士長も……良ければご一緒に滞在して頂けたら………。」
「そうか。有り難く甘えよう。」
「はい。」
ナナがまた少し苦々しい顔でスープを掬ったのを見て、思った。――――喜ぶ顔も、見たいと。
「――――あと、ついでだ。あの茶葉の店にも行きたい。」
一言告げてみると、ナナはとても嬉しそうに、笑った。
「………はい!」
―――――この距離感を、ナナは望んでるのだろう。とても安心したように、柔く嬉しそうに笑う。
――――だが、俺は……もう、保護者でいるつもりはない。
お前が欲しいとこの手を伸ばしたら……ナナはどんな顔をするのか。ほんの少し、怖くもある。
――――それに、病気のことも診察に同行するのは初めてだ。ナナの口から聞く病状は、『大丈夫』『調子がいい』『進行も遅い』そんな楽観的な部分しか出て来ない。
―――――が、恐らく真実は違うんだろう。
俺が今回一緒に行くと言ったのは、それもある。
ナナの状態を正しく知る。
それも――――兵士長の勤めだ。