第167章 Love Letter
ハンジにまで叱られて、しゅんと肩を落とすナナをなんとなく見ていられなくて、頭を乱暴に撫でる。
――――……目じりから頬にかけて、光の加減できら、と光った。
――――エルヴィンの部屋でまた、泣いてたんだろうと……わかる。
「――――ちょうど俺も飯がまだだ。まだ辛うじて開いてんだろ、行くぞ。」
ナナの細い手首を引いて、食堂へ連れて行こうとすると、ナナが動揺したようにハンジの方を向いた。
「えっ……、でも、団長補佐の……仕事……!」
「そんなのナイナイ!!ちゃんとご飯食べるのが先だよ!行っといで!!」
「……はい………。」
ナナは観念したように俺の後について歩き出した。扉を出たところで、その手首を離す。
――――痩せたな。
その骨ばった感触が、ナナに忍び寄る病魔を感じさせる。
閉める間際に食堂をこじ開けられた不満からか、不機嫌そうにどん、と差し出されたスープとパンをテーブルに置いて、ナナと向かい合って座る。
スープをチラリと見たナナが、辛そうに少し顔を背ける。
――――割と深刻だな、こいつの……食う事への恐怖心は。
それでも俺が大きくスプーンに掬ってそれを口に運ぶと、なぜかその様子をじっと見つめて――――……僅かにふっと、嬉しそうな……余所行きじゃないナナの笑みを見せた。そして意を決したように自分もスプーンでスープを掬って、なんとか口に運んで――――、小さく咀嚼して、喉を鳴らした。
ただ一口食うだけで、そんなにも勇気がいるのか。
――――そりゃ一人なら……食わなくもなるな。
ふっと息を吐いたナナに手を伸ばして、頭をそっと撫でる。
ナナは驚いた顔で俺を見た。
「――――いい子だ、ナナ。もう少し食えるか。」
「………はい………。」
ナナは嬉しそうに柔く笑って、また意を決したように……まるでガキが嫌いな食い物を食うように……また一口、一口となんとか食い進めた。