第166章 躊躇
このシーツに包まって2人、何度もキスをして……彼が私の髪を撫でながら、その蒼い瞳が私を映した。
エルヴィンの乱れた前髪から覗くその蒼が好き。
自分と私の肌の違いを確かめるように、悪戯に背中や腿を指で撫で上げては……小さく身を捩る私を、満足げに見下ろすその少年みたいな蒼が大好き。
2人の時にだけ見せる、少し強引で欲望をありのままぶつけてくれる姿。その溶かされそうな熱に酔いしれながら身体を重ねると……溶けあっていくような鼓動と体温が……恋しい。
そして――――……“幸せ”を感じることにまだ少しだけ抵抗のあるあなたが、少し困った顔で言う『――――幸せだ。』という声が愛しい。
何度も何度も耳元でくれた『愛してる』の言葉を、声を忘れたくない。ずっと私の中に、閉じ込めていたい。
「――――私のことも、一生エルヴィンの中に閉じ込めておくつもりで、これを首にかけた、よね………?」
しゃらん、と首元の翼のネックレスを鳴らす。
そう、そのはずだ。
けれどもう一人の彼の声が、耳に新しく残っている。
『――――もう、俺を止めるものは何も無い。遠慮する必要もない。お前が俺にそうしたように……強欲に我儘に、俺は俺の欲しいものを手に入れる。』
ベッドに押し付けられた時の言葉が蘇る。
エルヴィンがいたことで影に甘んじていたリヴァイさんは――――……エルヴィンがいなくなったことで、新しい関係を望んでいる?
そこに重ねるように、サッシュさんからの言葉ものしかかる。
『あの人のところに、もう一度戻る選択肢も、考えて、欲しい……!』
リヴァイさんのところに戻る?
リヴァイさんがそれを望む?
でも――――………、エルヴィンは望んでないのだろう、きっと。
なら私は……応えちゃいけない。
それがまたリヴァイさんを傷付ける?
でも応えれば、エルヴィンを傷付ける?
―――――わからない、だって……エルヴィンにもう、聞けもしないんだから。