第165章 明暗
今日の午後、火葬後に残ったエルヴィンの骨を――――……お墓に入れる。
幾人もの遺体をまとめて火葬しなければならないような惨事の時には、もう誰のものかもわからないまままとめて供養されるが、エルヴィンは国を救った英雄として手厚く葬られ、その骨も――――遺族の手でお墓に納めるようにと言われた。
……だけどエルヴィンの遺族は……自我を失いかけているマリアさんだけだ。
夫を亡くして心を病んだマリアさんは……ようやくエルヴィンのことを認識されるようになったのに………、まさか骨の状態で返すなんて……マリアさんがどうなってしまうか想像するだけで、怖かった。
――――もう少しだけエルヴィンの創り上げた優しい世界で笑っていて欲しいから。
時がいつかその悲しみを和らげてくれるまで………私は愛しい人のお母さんに嘘をつく。
だから私が代わりに、お墓にエルヴィンの遺骨を納めに行く。
本当はハンジさんも、リヴァイさんも行きたいだろうに……一刻も早く外の世界からの襲撃に備える必要があるため、今兵団はそれどころじゃない。
「私が皆さんの分まで、ちゃんと……伝えて来ます。」
「――――ああ、頼むよ。」
そうしてもう一度外の世界の手記と、エレンが夢で見たというグリシャ・イェーガー氏の記憶を書き留めたものを照らし合わせていく。
何もかもが繋がっていて、この手記にも……エレンが見た記憶にも、おそらく嘘はないのだろうと結論付いた。
なんて皮肉……。
私たちが夢見た飛行船は……私たちが目にするとしたらそれは………戦争の始まり、人々の多くの死を意味することになるなんて………。