第164章 記憶
「――――わかってんだ、俺が口を出すような事じゃないって……。でも、でも……あんなに強くて冷静な……完璧な兵士長をやっていても、あの人の心の奥底には――――いつもお前がいるんだ……!おおげさとかじゃなく、本当に――――……あの人にとって、お前はまだ………とことん愛し抜いてる女なんだよ……!」
「――――………。」
「―――俺はリヴァイ兵長が好きだ。憧れてるし、ずっと側で戦いたい。それと同じくらい……あの人に幸せになって欲しい。―――強すぎるあの人が安らげる場所………それはきっと……お前しかいない。」
サッシュさんがまっすぐに私を見る。
なんて強くて、熱くて………こんなにも部下に愛されるリヴァイさんは、十分幸せ者なんじゃないか、と思ったりもする。
その懸命に紡がれた言葉は私を揺さぶる。
こみ上げるこの感情は、なんなのだろう。
涙を堪えて、笑ってみせる。
だって、どういう顔をしていいか、わからない。
「――――私も、リヴァイ兵士長の幸せを願ってます………。」
「!!だったら……!!」
私だってリヴァイさんを愛してる。
ずっと変わらず……ううん、変えようとしたけれどどうしてもダメだった。
――――でも……エルヴィンの言葉が、声が、体温が、香りが――――まだ鮮明に私の中にあるから。
『逃がしてなんか、やらない。』
最期まであの人は有言実行で。
まるでそう躾けられたように……主人を待ち続けるように………これから晴れ渡る蒼天を見上げる度に、彼に焦がれるのだろう。
そう………、私の中には――――…
彼が私に盛り続けた……………甘やかで魅惑的で中毒性のある、甘美な毒がまだはっきりと、残ってる。