第164章 記憶
それに、またもしあのリヴァイさんとの日々に戻ってしまったら………彼の瞳に自分だけが映って、私の瞳に彼だけが映る。
まるでこの世界に2人だけになったような―――――、
罪深ささえ感じるほどの幸せを……体温を交えるような、激しい熱情をまた思い出してしまったら………。
今体調が思わしくないこの病状が好転しないまま……リヴァイさんの望まない死に方で私がいなくなったら………リヴァイさんはどうなる?
リヴァイさんからの身に余るほどの愛情を感じるからこそ、『ずっと側にいる』と約束できない自分がその想いに応えることはできない。
「――――ご進言、ありがたく……受け取ります……。」
「………ああ………。」
なんとか笑顔と呼べる顔を作って、サッシュさんに向ける。
サッシュさんもきっと察してくれたのだろう、とても切なそうな顔をして……。
少しだけ、笑った。
――――リヴァイさんのために私は何ができる?
何を返せる?
――――私がいなくなっても、辛くならないように……傷つかないように、してあげたい………。
いくら考えても答えは出なくて。
サッシュさんの部屋から出て扉を閉めた――――、その扉に、脱力するように背を預けた。