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【進撃の巨人】片翼のきみと

第164章 記憶




「――――安静に……って、言いましたね……?私………。」

「――――ハイ……。」

「――――薬を出しているので、お酒はダメとも……言いましたね?私………。」

「―――――………ハイ………。」



大柄なサッシュさんが、まるで子供みたいに肩を狭くしてしゅん、と縮こまる。その様子がまるでいつもリンファに叱られていた時のようで。



「――――ふふっ………。」



私が思わず小さく俯いて笑うと、サッシュさんは目を開いて驚いた顔を見せたあと、キラキラした表情で前のめりに私の方を見た。



「笑った……!」

「え?」

「なんだよ……!笑える、じゃねぇかよ………!」



サッシュさんは顔をしかめてから、手の甲で目元を拭った。そんなに私のことを心配してくれていたのか……自分は満身創痍なのに……この人はこの人で本当に……なんて温かで真っすぐで……優しくて。

私のことを気に掛けるその熱量はまるで……リンファから引き継いだものを大事に守っているようで。

2人が通じ合っていることがまた――――……私の涙腺を弱くするんだ。

ぽろりと流れた涙を見て、サッシュさんが茶化したように笑う。



「―――ははっ……!お前はいつも、割とひでぇ顔で泣くよな。」

「うるさいです。サッシュさんも泣いてたくせに。」

「はっ?!泣いてねぇし。」

「泣いてましたよ。私が笑ったことが嬉しすぎて。ね?」



私がクスリと生意気な目で笑ってみると、サッシュさんが顔を赤くして声を大きくした。



「はぁ?!お前日に日にリンファに似て来るな!!俺先輩だぞ?!分隊長だぞ?!」



――――ああよくこうやって……、3人で悪態をつきながら……何でもない事を言い合って、笑って……。

サッシュさんがいてくれるから、私はリンファのことを鮮明に思い出せる。

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