第164章 記憶
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懲罰房のエレンとミカサに食事を届けた。
そして、アルミンにも……ちゃんと言えた。
『おかえり』って。
『生きて帰ってくれて、嬉しい』って。
もちろんこの胸に大きく空いた穴はそう簡単に埋められるものではないし、いつまでも私はエルヴィンを忘れたりしないだろう。
でも、アルミンが生きていてくれることが嬉しい事も嘘偽りない本心だ。
首元の包帯にそっと手をやる。
――――リヴァイさんが、その心の内の苦しみも、悲しみも、葛藤も―――――……見せてくれた。
リヴァイさんが呟いた、『お前は俺を責めるべき』……その一言は……私がどれだけリヴァイさんを迷わせ、苦しめていたのかを意味していた。
だから……伝えられて良かった。
責めてなんてないって。
帰って来てくれて、嬉しいって。
エルヴィンを信じて戦ってくれて、ありがとうって。
――――心が裂けそうなほどの辛い選択だったにも関わらず……エルヴィンの意志を尊重してくれたのは……リヴァイ兵士長の、決してぶれない……エルヴィンを信じているその軸によるもので、私はそれを―――――愛しいとすら、思っている。
リヴァイさんにちゃんと、伝えられたから。
私はアルミンにも……ちゃんと伝えることができた。
――――いつだってあなたは、どんなに自分が苦しくても……辛くても………私を導いてくれる。
――――私は、何を返せる?
大事なあなたへ。
どうすればいい?
そう、心の中で何度も問いかけながら、もう一人の大切な人のところへ向かった。