第164章 記憶
その数年後に撮られたのであろう写真が、手記に挟まっていたものだ。
――――どこか冷たい目をした息子に、この時はまだ――――気付いていなかったのか。
やがてマーレも動きを見せる。
巨人の力を駆使して、パラディ島に潜入、“始祖の巨人を奪還する”という目標を達するため、マーレに忠誠を捧げ、7つの巨人の継承に相応しい“戦士”を育て上げようとエルディア人の中から戦士候補を募った。
なぜなら、列強各国の兵器開発の力は数年で飛躍的に向上し――――もはや、巨人の力で他国を牽制できなくなる日は近いことが目に見えていたからだ。
ここからは兵器を駆使した戦争になる。
――――燃料の確保が命であり……その燃料が大量に埋蔵されている場所こそが………パラディ島だったから。
壁の中に逃げた王は、大陸を去る前に『今後我々に干渉するなら、壁に潜む幾千万の巨人が地上のすべてを平らにならすだろう』という、壁の超大型巨人を使って――――……この大地全てを踏みつぶして地に染めると、宣言を残していた。
………そのためいくら強大な軍事力を持ったマーレでも、正面からパラディ島に攻め入る事ができなかった。
――――ならば潜入して奪還せよと、戦士の育成が始まったのだ。
戦士になった暁には、その家族は差別などとは無縁の自由な生活『名誉マーレ人』にしてやると……餌を撒いて。
――――多くのエルディア人が名誉マーレ人を……選ばれし戦士を目指した。
その裏でエルディア復権派は―――――焦った。
自分達と同じ目的を持ったマーレ。
敵うはずがない。
確実に始祖の巨人の奪還は先を越される。
―――――苦肉の策で父さんは……思いついてしまった。
“私たちの息子、ジークを……マーレの戦士にする”と。