第164章 記憶
マーレ当局にフクロウ、という名の内通者を持ち、来たる日にこのマーレとエルディアの支配関係を覆し、その昔にエルディアが世界の頂点に君臨したその時を取り戻すべく秘密裏に活動をする“エルディア復権派”の組織。
父さんは憎しみを糧にそこに組みした。
――――そこで出会ったんだ。
大陸に留まるエルディア王家の最後の血筋である……ダイナ・フリッツに。
自分可愛さに“始祖の巨人”を持ち逃げただけでなく、壁の中に閉じこもったもう一つの王家から――――、始祖の巨人を取り返し、ダイナ・フリッツの元へ還す。
9つの巨人の力を操れる“始祖の巨人”さえ手に入れれば………、7つの巨人の力を有しているマーレですら――――滅ぼすなど他愛もないことだろう。
それこそが歴史を正し、エルディアの誇りを取り戻し、始祖ユミルへの弔いになると信じて疑わなかった。
そんな劇的な運命を共にする2人は当然のように惹かれ合い――――結婚。
そして……王家の血を引く息子、ジークが生まれた。
父さんの目には……この息子が……まるで神の遣わした救世主になるべくして生まれた選ばれし、特別な子に見えた。
――――そう、信じて疑わなかった。
――――なぜならそう、してみせると……確固たる意志が父さんには、あったからだ。
……そしてそれが………そもそも大きな過ちだったなんて……この赤子を抱いた時には、微塵も思わなかっただろう。