第164章 記憶
「――――優しい子、エレン。私は大丈夫………。」
「――――っ……ナナ………!」
「――――ね?大丈夫。だからほら、ごはん食べて、いい子にしててね?」
「ガキ扱いすんなよ!!」
ナナの腕を思わず振りほどくと、そうするのを待ってた、と言いそうな顔でナナはまた小さく笑った。
「……ふふ。」
ナナが俺の独房を出て、アルミンが鍵をかける。
そのアルミンにも、ナナが声をかけた。
「――――アルミン、さっきは……ありがとう……。」
「―――えっ、いえ……、僕は……むしろ………。」
言い淀んで目を伏せるアルミンを、目を細めて切なそうに見つめて――――ナナは言った。
「あなたが生きて帰って来てくれて、嬉しい。アルミン。」
ナナのその言葉に、アルミンが目を見開いて制止し、ゆっくりとナナの目に視線を合わせた。
「――――おかえり。」
「………ナナ、さん………。」
アルミンが込み上げる涙を手の甲で拭いながら、また深く俯いて……ナナはその頭を、よしよしと撫でた。
そしてナナが俺の隣の独房のミカサの方に目をやった。
「あ、ミカサの食事もとって来るね、ちょっと待ってて。」
「――――うん………。」
ナナはそう言ってまた、階段を上って行った。
火葬の時にあんなに乱れていたナナが………もうずいぶんいつものナナだ。
―――――あの怪我と言い、一体何があったのだろう。
ぼんやりナナの事を思いながら、夕食をとった。