第164章 記憶
「――――食事持って来た。どうぞ。」
「………ありがとう……。」
アルミンが牢の鍵を開けて、ナナが独房の中の机に食事を置いた。
――――今日炎から引き剥がすために担いで、思った。
――――軽すぎる。
………痩せたな………顔色も悪い。
エルヴィン団長を失って………仕方ないのかも、しれないけど……。
ナナを凝視する俺に気付いたのか、目が合った。そしてまたふにゃ、と薄く笑いながら――――……俺の頭を軽く撫でた。
「――――いい子にしてなきゃ駄目だよ?……リヴァイ兵士長に、逆らったんでしょ?……本当にもう……エレンはいつも、無茶ばっかり………。」
ナナのその言葉にギクッとする。
――――知ってるんだ、俺が………エルヴィン団長じゃなく、アルミンに注射を使えとリヴァイ兵士長に迫ったこと………。
それはつまり………ナナにとっては……俺がナナの大事なエルヴィン団長を見殺しにしろと言ったのと、同じで………。ナナがこんなにボロボロになるほど傷つく要因を作ったのは……俺達で………。
途端にナナの目が見られなくなる。
俯いたまま、ごめん、と言うべきか悩んだ。
――――だって謝ってしまえば、それは俺の私情でアルミンを生き返らせろとごねたことになるじゃないか。
―――――違うんだ。
俺は……本当に、アルミンの力こそが人類のためになるって信じていたから―――――………、そしてなぜか、聞こえた気がしたんだ。それが正しい。そうしろと。頭のどこかで。
そんな言い訳がましい葛藤を頭の中で繰り広げていると、ナナは察したのだろう。
俺に腕を伸ばして、ふわりと抱きしめてくれた。