第163章 相殺
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――――リヴァイさんは俯いた。
小さく体が震えてることには、気付かないふりをする。
ただ慈しみ、抱き締める。
悲しみを、苦しみを―――――……どうしようもなく身を焼き尽くすような辛さを――――……少しでも、分け合えたらいい。
小さく歌ったその歌に身を任せるように、リヴァイさんは私に身体を預けてくれる。さっきまでの冷たく獰猛な空気は、どこにもなくて―――――、ただ柔らかで優しい空気の中、しばらく身体を寄せ合った。
しばらくして、リヴァイさんはむくりと起き上がった。
「――――リヴァイ、さん……?」
私が呼ぶ声に振り向きもせず、急いだ様子でつかつかと部屋を出て行ってしまった。
「…………?」
鍵をかけずに行ったということは、私はまだここにいていいと言う事なのだろうと思って、ベッドの上で膝を抱えて、大人しく待ってみる。
「――――あ、血………。」
―――――やっぱり血は止まりにくい。
唇も、首筋も……シャツの襟が血で真っ赤だ。
――――そう言えばあの薬ももう僅かだ。もらいに行かないと。――――でも……、エルヴィンもいなくて……私はもう誰にも身体を許すことも無いかもしれないと思うと、必要ないんじゃないかとも思う。
けれどビクターさんや……ダミアンさん……フロックさんの……ようなことも、ある、かもしれないから………特に体に害がないなら、飲み続ける方がいいのか……ロイに、相談してみよう。
なんてぼんやりと考えていたのだけど――――ふと、あることに気付く。
そういえば………ウォール・マリア奪還作戦の前まではとても体調が良くて………、信じられないくらい、いつも通りだった。
みんなが発ってからは……みるみる症状が顕著に出て……貧血でピクシス司令も心配させてしまった。
心によって体調は左右されるのは少なからずあるけど、あまりに顕著だったのは……その日からは、薬を飲まなくなったのも、関係あるの……?
まぁ確かに……食事もとらず、壁の上にずっといたからそもそも体調は悪化して当たり前かもしれないけど……今も病状はあまり良くなくて。