第163章 相殺
「おかえりなさい……っ……、リヴァイ、さん………!」
「――――………。」
「あなたが辛い時は、また私がこうやって抱き締めます。何度だって………!……私たちはまだ……っ……生きていかなくちゃいけない、から……っ……!」
ナナの言葉に、何も答えられなくて……小さく悪態をつく。
「――――生意気、だな………。」
「――――はい。……元気な私は……生意気だったでしょう?――――昔から。」
ナナが小さく笑んだ声は、心地いい。
「……そうだな……。人形みてぇなお前より、悲痛に泣くお前より―――――ずっといい。」
「――――それを取り戻してくれたのも、リヴァイさん、あなたです……。」
「――――そうか。」
「……そうです。あなたはいつだって私を簡単に――――掬い上げてくれる。だから私も……あなたを少しでも、癒したい。」
ナナがいつか歌った歌を、耳元で小さく歌った。
その歌声は驚くほど優しくて……慈愛に満ちた旋律は、欲望をぶつけて無理矢理その身体を虐げて抱くよりも、何よりも―――――………俺を癒してくれる。
頭が割れそうなほどのガンガンとした頭痛も、それに伴う鬱憤や苛立ちも清らかに溶かされて流れていく。
――――お前は俺を魔法使いだと言うが、俺からしてみれば血と死臭に塗れて動けなくなった俺を簡単に浄化して掬い上げる。
お前の方がよっぽど―――――
魔法使いみたいだと思う。