第163章 相殺
――――リヴァイさんが、エルヴィンの死と向き合えるように側にいてくれたから。
まだ傷は癒えないし、もちろん辛い……寂しい……悲しいけれど……、こうしてちゃんと、考えられるようになったから。
話を、ちゃんとしたい――――……そう思った瞬間、リヴァイさんの目にぎらっと鈍色の昏い光が射して―――――……
猛獣が獲物を仕留めるように、私の首を思い切り―――――
噛んだ。
「――――っ………ひぅ…………っ!」
咄嗟に声が漏れ出る。
そして――――ギリギリと締めあげられる感触と、犬歯が肌に食い込む感触は、私をあの頃に、引き戻す。
――――リヴァイさんから与えられるなら
痛みでも……いい。
辛くしても………
ひどくしても―――――………
――――――そう、例え……殺されても。
強く優しく、全てを背負い込んで苦しむあなたの傷が癒えるなら、私は何だってできる。
なんだってあげる。
――――もしそれで死んでしまったとしても、エルヴィンと空から見守るから。
だから………いいよ。
そう、伝えたくて―――――抵抗していた体から力を抜いて、身を任せた。