第162章 葬送
「僕が……っ……生き残ってしまって、ごめん、なさい……っ……!」
「――――アルミン、謝るな!!!」
頭を垂れてみっともなく大粒の涙を流す僕を、エレンが一喝した。
――――そう、ナナさんは僕を責める気なんてなくて。――――この人のことだ。
きっと、笑って『おかえり』って言おうとしてくれたに違いない。
――――でも、あんなに愛し合ってた人だ。
失って――――……いつも通りでいられるはずがない。
――――錯乱状態なんだろう。
……だから今ナナさんの様子に僕が必要以上に傷ついてなんていられない。
――――やるんだ、ちゃんと。
リヴァイ兵長が言った――――、『後悔させるな、誰も。』その言葉が蘇る。
ナナさんがまた笑顔を取り戻したその時に、リヴァイ兵士長が僕を生かした選択は間違っていなかったんだと思って貰えるように。
――――僕はエレンが言う通り、頭を垂れて謝ることをやめた。
ナナさんはその場に座り込んで、美しい人形のようにただただ涙を流したまま呆然と、空高く巻き上がる炎を見上げていた。
一本の大きな炎の柱から零れ出るように……
これまで心臓を捧げてきた兵士の命の灯にも見える火の粉が辺りに舞ったけれど―――――――――
すぐにそれらは儚く、風に吹かれて消え去っていった。