第162章 葬送
「――――ナナ。」
「は、い………。」
ハンジさんは私の両肩をがし、と掴んだまま真っすぐに私の目を見た。
「エルヴィンが命を賭けて取り返したウォール・マリアと……そこに眠っていたグリシャ・イェーガーの遺した書物……ナナに、見て欲しい。」
「――――はい………。」
「だから、死なれちゃ困る。」
「はい………。」
「――――思ったより辛いんだ………エルヴィンを、失った、こと………。――――そして、この世界の――――真実も………。これからの、重責も………。」
「――――………。」
ハンジさんが俯く。
いつになく弱気な言葉を、震えるような声で話してくれた。
――――大事な人が、泣いてる。
私はようやく――――……リヴァイさんの手を借りてやっとなんとか、向き合うことができたから………。
今度は私が、大事なこの人を――――……抱き締めるんだ。
「――――ナナ、私たちの、側にいてくれるかい?」
「――――もちろんです……………。」
ハンジさんをぎゅっと、抱き締める。
お互いぐしゃぐしゃの顔で、泣いた。
――――この細い肩に、これから団長としての重責が――――……人類の未来が……兵士たちの命が――――……のしかかる。
支えるんだ、それが――――……私の、団長補佐の……いる意味だ。
「――――ありがとう、ナナ………。」
ハンジさんとエルヴィンは、ずっと古い……もう15年近くになるって、いつかエルヴィンが言っていた。
――――お互い早くに家族と離れて心臓を捧げた者同士……隊長や分隊長を共に勤めて来た者同士、家族に近しいほどの間柄だったはずだ。
ハンジさんの心の傷はどれほどだろう。
きっと計り知れない。
――――あぁそうか、リヴァイさん……。
私が胸を貸せる、大事な存在が私にはいてくれる。一緒に泣いて――――……また前を向くために抱き合って、支え合える。
――――私たちはまだ――――生きて行くんだ。
生きて、行かなくちゃいけないんだ……。