第162章 葬送
俯いたまま自分の中で散々押し問答をしたのだろう、言うべきか、言わないべきか……ハンジさんは悩んだ末であろうその言葉を、またひどく辛そうに口にした。
「――――リヴァイを、恨まないでやって欲しい……。」
「――――………。」
「エルヴィンを選ばなかったのは、きっとリヴァイの――――……。」
どう言っていいのか、果たしてその言葉は自分が言っていいのか、と葛藤しながら言いかけたハンジさんの、固く握られた拳にそっと掌を重ねた。
「――――恨むわけ、ないです………。」
なんとか笑って見せるけど、どうしても頬を伝う涙は枯れない。
「――――わかって、るんです……。辛いのは私じゃなくて……きっと、こうして私が泣くのを見ている、リヴァイさんや――――……アルミンのほうが、辛いって………。」
「――――………。」
「だから、ね……笑おうと、思うんです……。『おかえりなさい』って……『あなたたちが生きていてくれて、嬉しい』って……ちゃんと、伝えようって………。――――でも……。」
「――――ナナ………。」
自分のことすら思い通りに操れない自分に嫌気がさす。
私は自分の、まだ震えが止まらない両手を見て―――――、そのまま、どうにもできない感情を吐露する情けない顔を見せたくなくて、両手で顔を覆った。
「ごめんなさい……、まだ、できそうに、ない……です……っ……、だって――――……こんなに、死にそうなほど――――……苦し、い……………。」
「――――っ……、そうだね、ごめん……、ナナがリヴァイを責めるはず、ない………。」
「………っ……、ごめ、なさ………。」
「謝らなくていいナナ。……いいんだよ………。」
ハンジさんがぎゅっと、私を抱き締めてくれる。
「――――こんなに苦しくても……っ……、生きて、いかなきゃ………いけないん、ですね………。」
「―――――………。」
「もう、共に夢を見るエルヴィンは――――……いないのに………。」