第2章 変化
「今は、これだけしかありませんが………お給金が入れば、もう少し用意できます。旦那様にお願いすることも厭いません!!だから………お嬢様から手を引いてください………!」
「ハル!!」
リヴァイさんは、面倒臭そうな表情のまま足元の小袋を拾い上げ、中身を一瞥して言った。
「………全く足りねぇな。」
「え………?」
「珍しい毛色で見てくれもいい。こいつを売り払えば、お前の給料の五年分はくだらねぇよ。」
理解ができなかった。呆然とする私の肩をハルがきつく抱きしめた。
「………大丈夫ですお嬢様……、こんなクズにお嬢様を渡したりしません!どんなことをしてでも、お守り致します!」
「リ……ヴァイ……さん……、うそでしょ………?」
リヴァイさんは、私に冷ややかな眼を向けた。
「お嬢様は騙されていただけなのです。何も悪くありません……!」
「違う!!違うの!!私が……私が外の―――――――――――」
外の世界を知りたくて、ワーナーさんのところに来た。それだけなの。
そう言おうとした時、リヴァイさんに髪を掴まれ、切れ長の鋭い眼が私を捕らえた。
「お前のような苦労知らずのガキが地下街に迷い込めば、こうなることは予想できただろう?ただそれを利用したのが、俺だっただけだ。」
私の目から、大粒の涙があとからあとから零れ落ちた。
また、私は大切な人から捨てられるのか。
「………お前の淹れた紅茶は悪くなかった。だからこれで手を引いてやる。」
掴んでいた髪の毛を離し、彼の指は私の頬をそっと撫でた。
その指は優しく、一縷の期待を残してしまいそうになる。