第161章 劣情
しばらく泣いて、泣いて、泣いて――――……泣きながら、今までのエルヴィンとのことを思い出した。
どれもこれもが煌めいて、それがまた――――絶えず心の奥底から涙を湧かせる。
私の世界を広げ、色んな事を教え、支え、――――私が私でいいんだと、肯定できるように………愛してくれた。
最初に知ったあなたはどんな時も冷静で、そつがなくて、抜かりなくて……その全てを見透かすような蒼い瞳が、怖いと思う日もあった。
――――でも徐々に見せてくれるようになった、触れさせてくれるようになった本当のあなたは―――――………我儘で子供っぽくて………嫉妬深くて………自分の欲に忠実で……激しく一途に――――愛してくれる、人だった。
――――私は小さく、震える声で………マリアに祈る歌を歌う。
「――――約束、通り……マリア……を、取り返したんだね……、すごいね、頑張った……ね……。」
泣きながら、エルヴィンの髪をよしよしと撫でる。
――――マリアの赦しを得るために……命を賭けて、やり遂げたあなたを……帰って来なかったと責めるより………一緒に死にたいって嘆くより………すごいねって……讃えよう。
――――お父様と、天国で――――また、外の世界の話をして笑えていたら、いいな………。
「――――……う……っ……ぇっ…………。」
それでも、どんなに思考を操ろうとしても―――――簡単にその悲しみの渦から抜け出せるわけはなくて………
また、エルヴィンの冷たい頬に触れては―――――……
冷たい唇に触れては―――――……
体が引き裂かれそうなほどの喪失感に耐えながら、涙を流した。