第161章 劣情
「――――この………花………。」
私はその中の一本を手にとった。
私の誕生日に……エルヴィンが野で摘んで、私の髪に挿してくれた――――クローバーの花。
小さい頃……四葉のクローバーを探して、よく……遊んだ。
敬礼するように胸の上に置かれたエルヴィンの手に、クローバーの花を持たせるように置いてみる。
「―――――っ………今度は……私が……いくらでも、摘んで……来る、から……っ………!」
『こうやって花の”命“を手折って君に与えたら―――――』
そう言って私を撫でたエルヴィンが、目の前に鮮明に蘇る。
「――――逝、かない……で………っ………!」
まったく受け入れられない。
目の前に、もう息をしていないエルヴィンを見ても。
なんとかすれば、目を開けて微笑んでくれるんじゃないかって……いつもの、悪戯な顔で――――『嘘だよ。』って………『君を置いて行くわけないだろう?』って………抱き締めてくれるんじゃないかって……諦められない。
「―――――ぁあぁぁぁぁぁああっ………………。」
私は棺に、しがみついて―――――泣いた。