第161章 劣情
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誰にも邪魔されなくて、ちょうどいい。
―――――明け方に、リヴァイさんに送り出してもらって……私はなんとかふらふらと、遺体の安置場所まで辿り着いた。
―――――扉を開けるのに、一瞬躊躇する。
でも………会わなきゃ。
ちゃんと。
伝えたいことが、たくさん―――――あるから。
扉を開けるとそこには―――――豪華な棺が。
沢山の兵士が亡くなった。
帰還したのは12名のみだった。
それに……連れ帰れるほどの“原型”を留めた亡くなり方をしたのが―――――……エルヴィンだけ、だったと言う。
あとのみんなは……仲間は、超大型巨人出現の爆発に巻き込まれて――――……跡形もなく、吹き飛んだ。
そして……獣の巨人の投石によって、回収しきれないくらいに……バラバラに、兵士たちの身体を裂いたと……聞いた。
「――――う、……っ………。」
その地獄を見てもいないのに、想像しただけで胃が鷲掴みにされたように、吐き気をもよおす。
なんとか口を抑えて、胸を押さえて蹲る。
――――帰って来れなかったモブリットさんや……フィオ……マルロさん………あなたたちは……せめて、苦しまなかっただろうか………それだけを祈る。
なんとかまた体を起こして、豪華な棺に恐る恐る近寄った。
たくさんの花に埋め尽くされた彼は、もうその蒼い瞳で私を見ない。
彼を囲う花は、豪勢な――――花屋で大事に育てられたのであろう、大輪の花々。
でもその隅っこに、小さな………野に咲く花々が、遠慮がちに添えられていた。――――きっと民衆の誰かが、彼の死を悼んで―――――摘んできてくれたのだろう。