第160章 虚無
「――――お前は何も変わってねぇな。」
「…………!」
「――――心を壊してまで夢を追えと、真実を解き明かせといつ誰が言った?」
「――――………。」
「ワーナーは言っちゃいねぇだろうが、そんなこと。言うわけがない。あのじじぃが、どれほどお前を大事にしていたか……愛していたか、――――幸せを、願っていたか……わかってんだろ。」
「――――でも、私に……大事なものを……託した……っ……!」
「あぁそうだ。だがそれは――――お前が目を輝かせて羽ばたくためだ。――――雁字搦めにして、苦行を強いながらも果たせと、縛り付けるためじゃない。―――――お前が死に逃げる口実に、あのじじぃの想いを捻じ曲げんじゃねえよ。――――そんなことは、俺が許さない。」
「――――――………。」
リヴァイさんの目は、悲しくて……呆れてて………強い怒りを現していた。―――――私が……ワーナーさんの想いを……捻じ曲げてる……?
「――――エルヴィンだってそうだ。確かにあいつはお前を死ぬまで離さないつもりだったが――――……お前をここに置いて行く判断をした時点で、例え自分と離れてもお前が生きることを望んでた。あいつなりに割り切って腹を括ったんだ。――――あの……独占欲の塊みてぇな男が、だ。――――俺に分かって、お前に分からないはずがない。」
「………………。」
「お前が逃げる口実に………っ………、死に逃げる口実に……っ……あいつを――――……エルヴィンを使うな……っ!」
リヴァイさんは、苦しそうに言葉を繋げて――――……ダンッ、と強く強く机を拳で打った。
「――――………。」
リヴァイさんははぁ、と小さく息を吐いて、荒げた息を整えて―――――私を見た。
「――――生きてる俺達の義務だ。ちゃんと受け止めろ。――――お前が1人でそれをできないなら、俺が教えてやる。」
「――――やっ……!」
私の顎を放して、腕を乱暴に掴んでベッドに引き倒した。
両手を掴んで張り付けて―――――、耳も塞げないようにして、リヴァイさんは―――――エルヴィンのその死の真実を―――――語った。