第160章 虚無
―――――やるべきことをやるの。
私にできることを。
そう、命が尽きるまで、やり続ける。
それでもし死んでも……それなら、エルヴィンは喜んでくれる?
頑張ったなって、またその腕で抱き締めてくれる?
――――だって私たちは、真実に辿り着くまで進み続けなきゃいけない。
だから頑張って頑張って……頑張った先に倒れるなら、赦される……?
海を、その先の世界を諦めても……赦してくれる?
ねぇ、ワーナーさん………。
「――――私にやれることを、やらなきゃ……。」
「そうだな。それは同意だ。だが優先度ってもんと限度ってもんがあるだろう。――――今のお前は、エルヴィンの死から逃げて、自分の体力の許容量も無視してまるで死に急いでるじゃねぇか。――――死にたがってるようにしか見えねぇんだよ。………苦しい。お前の……その姿は。」
リヴァイ兵士長の声が一瞬、掠れたように聞こえた。
私は彼のその変化にいつもなら気付けるのに―――――この時は、自分の事ばかりで……また、声を荒げて反抗した。
「――――真実を突き止めるまで、私たちは立ち止まっちゃいけない……っ……!――――例え死んでも……っ……私が倒れても……!」
「――――………。」
「だって、じゃないと……っ……、諦めるなんて、赦されないから……っ、託された夢を、命を放棄するなんて赦されない……っ……、だから突き進まなきゃいけない……っ……、ワーナーさんだってそれをきっと望んでてっ………だから、その道の上でなら―――――……」
「――――その道の上でなら、なんだよ。」
「――――っ………。」
言葉の端に、出てしまった。
私が辛うじて噤んだその先の――――……『死んでも赦される』その言葉を、リヴァイ兵士長が気付かないはずがなかった。
リヴァイ兵士長の手が、私の顎をぐい、と掴んで無理矢理視線を捕われる。
その表情は、いつもより深く眉間に皺が寄せられていて――――ひどく苛立っているようだった。