第160章 虚無
「――――これもナナに、返したいのに………、あいつが、笑ってくれなきゃ……俺は………。」
どうやらリンファと揃いでつけていたナナの髪飾りのようだった。サッシュに預けていたのか。
――――俺にはナナが、必要以上に死に急いでいるように見えた。
どうやらハンジにもサッシュにも、そう見えているらしい。
「――――兵長。」
「………なんだ。」
「――――ナナの側に、いてやってもらえませんか。」
「――――………。」
サッシュは懇願するように、俺を見上げた。
「私からも頼むよ、リヴァイ………。エルヴィンの火葬はもう明日だ。このままちゃんと向き合えないまま、永遠の別れになるなんて……ナナは絶対に後悔する。」
ハンジがいつになく昏い表情のまま、光の薄れた目で俺を見た。
――――ナナが笑わない。
それだけで……こんなに辛そうな顔をする奴らがいる。
ナナが寄り添い、癒し、守ってきたものは――――俺達の中で、とても大きなものになっていたと気付く。
「――――……ああ、わかった。」
俺は日が沈んで月が高く上った頃、ナナの部屋を訪ねた。