第160章 虚無
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――――――泣き叫び、取り乱すと思った。
だがナナは―――――、冷静にエルヴィンの死亡を確認して、その後もサシャやサッシュ、ハンジを中心に重傷者の手当をした。
――――生きて還った人数が少なすぎたからか、負傷者の治癒ももう完了したのか、休む間もなく今度はさっそく団長補佐の仕事を黙々とこなした。
重傷者の入院手配、死亡者のリスト化。
そして念のための疫病の検査の手配も。
その様子に、ハンジが圧倒されるほどだった。
俺達もあまりに失ったものが大きく――――、しばらくはトロスト区の調査兵団支部の兵舎に滞在して回復を待つことになった。
――――まぁどうせ、兵規違反をしたエレンとミカサにも懲罰を与えねぇといけないことだしな。
団長室で今後の女王へ謁見する際の報告内容や今後の組織の行末についてハンジとサッシュと3人で話をする。
サッシュは全身至る所を骨折しているためベッドに横たわったまま、俺達はその脇の椅子に腰かけた。
「――――あの、リヴァイ兵長………ナナの様子……やっぱりおかしいですよね……?」
「――――ああ………。」
「――――向き合えないのかもね……エルヴィンの死と。」
「………………。」
「あのまま動き続けたら、今度はナナのほうが……病に倒れてしまうよ……。実際、顔色もすごく悪かった………。」
「はい……俺も、話をしようと思って――――……ナナに診てもらう時に話しかけたんですけど……『おかえりなさい、無事で良かった』って……それしか、言わなくて……まるで、魂もなにも、そこに……ないみたいで……。俺、心配です……。」
サッシュが手に持っていた何かを、じっと見つめた。