第160章 虚無
「――――死亡確認。安置所に運んでください。」
「――――………。」
「――――負傷者は他には?」
「………っ……サッシュとサシャが重傷だ……。」
リヴァイ兵士長は、言葉を詰まらせるほど辛そうに答えた。
「はい。」
私がその場を去ろうとすると、ハンジさんもまた苦しそうな顔で私を見た。
――――ハンジさんは顔の半分を包帯で覆っている。
彼女も、大きな怪我をしてる。
「――――ナナ………。」
「――――ハンジさん。後で診ます、必ず。」
虚勢の薄い笑みを向けると、ハンジさんは何かを噛みしめるようにして目を閉じて、答えた。
「………ああ………。」
サシャをコニーが抱えてリフトから降りるそれを見つけて、駆け寄る。
――――視線を感じた先に目をやると、エレンとミカサとアルミンが――――……私を見て、辛そうな顔をしている。
――――アルミンは………泣いていた。
――――今はそんなことに構ってる場合じゃない。
そう、治すの。
救える命は、私が救う。
―――――守ってみせる、大事なあなた達を。
私にしかできないことは何?
今私がやるべきことは何?
―――――己の無力さに打ちひしがれるのは後でいい。
愛しい人の死を嘆くのは――――――後でいい。
そう、自分に言い聞かせた。